いらすとやが大活躍!
有名なおとぎ話が太宰風にアレンジされてます。
アレンジというか自分なりの解釈しているというか。二次創作みたいな。
冒頭で防空壕で子供に絵本を読んでることが書かれていますが実際に罹災しながら原稿が書かれたようです。
こぶとりじいさん、浦島太郎、かちかち山、舌切り雀の最強4本がラインナップされてます。
舌切り雀のところで桃太郎も書きたかったけどやめたことに関して理由が書かれています。
「日本一」の旗を持っている桃太郎という男を日本二も三も経験していない自分が描写できるはずがない、ということらしい。
あらすじに関してはよく知られてるであろうものと基本一緒でオチもそのままです。
キャラの解釈を自分なりに変えてるのでそこまでするならオリジナルでええやん、と思った。
以下それぞれの物語紹介。
4つ分書くのがしんどかったので今回はこぶとりじいさん、浦島太郎だけ書いてます。
瘤取り
私が知ってるこぶとりじいさんは性格のいいこぶじいと性格悪いこぶじいがいたんですが実際は別に誰がいいやつとか悪いやつってのがないらしい。
性格良いじいは踊りがうまくて、鬼に気に入られる。結果また踊りに来てほしいと思った鬼がこぶを人質にとる。
性格悪いじいは踊りが下手で鬼的にももう来なくていいですわってなる。こぶ返すから帰ってくれーとなりダブルこぶじいさんになってしまう。
太宰版は元ネタの二人のじいさんの差は踊りの上手い下手だけで誰か悪いやつがいるわけではないパターンです。
おとぎ話はだいたい悪いことをしたやつが報いを受ける、という話が多いのにこのダブルこぶじいはただ踊りが下手だっただけでかわいそうなことになってます。
この物語には所謂「不正」の事件は、一つも無かつたのに、それでも不幸な人が出てしまつたのである。
鬼もこの話では何も悪いことしてないのでなんで鬼にしたんやろって思った。
こぶむしり取れる人型生物が鬼しかおらんのかな。
人間生活の底には常に「性格の悲喜劇」という問題があるということだそうです。
踊り上手いじいは元々こぶのこと気に入ってたから取られたくなかったっぽいし踊り下手な方は緊張してたらしいし、それぐらいの差が結果につながったのかな。
wiki読んでたら他人のこぶ付けても拒絶反応あるから数日で取れると考えられる、と書いてた。そういうことちゃうねん。
浦島さん
これも内容についてはみんなが知ってる浦島太郎と一緒です。
今回の浦島太郎は風流で冒険心は特にありません。
助けた亀が竜宮城に連れて行ってくれると言ってるのに亀の甲羅に乗るのは風流じゃないとか冒険は風流じゃないとか言って断ろうとします。
しかし亀は心意気を買ってくれといって反論しまくります。その勢いに押されて浦島は竜宮城に向かいます。
ここの浦島と亀のやり取りは面白かった。亀が江戸っ子口調で口達者なので会話のテンポがめちゃくちゃいい。
竜宮城では無口な乙姫に陸上では肯定されなかった風流ネタも全肯定されながら過ごします。
乙姫があまりに無口なので浦島が亀にいつもあんなに無口なのか?と聞くと
言葉といふものは、生きてゐる事の不安から、芽ばえて来たものぢやないですかね。
という哲学っぽい返答。
NARUTOでも焦ってるときのサスケってめっちゃしゃべるからわかるかも。ナルトはいざというとき無駄口叩かないので不安とかないんだろなーってなる。
その後、竜宮城で全肯定されすぎて飽きる浦島。
浦島は、やがて飽きた。許される事に飽きたのかも知れない。陸上の貧しい生活が恋しくなつた。お互ひ他人の批評を気にして、泣いたり怒つたり、ケチにこそこそ暮してゐる陸上の人たちが、たまらなく可憐で、さうして、何だか美しいもののやうにさへ思はれて来た。
満たされすぎて不満に思う人間の欲深さエグい。
地上に戻ると300年が経過していて貰った貝(玉手箱と同じ役割かな?)を開けておじいちゃんなって終わりですがそこの解釈についても書かれています。
乙姫がなんでそんな貝あげたんやって話。
年月は、人間の救ひである。
忘却は、人間の救ひである。
どうせ300歳やねんから今までのこと忘れた方がいいやろってことかな?
何回か読み直したけど乙姫の慈悲深さが何かわからんかった。
テストで出てたら詰んでた。
普通は浦島不幸だなーと思うけど、絵本のラストに「悲惨な身になったものだ。不幸だ。」と書かれているわけではないので浦島は決して不幸ではなかった、というのが太宰の考え。
浦島はそれから10年間、幸福な老人として生きたそうです。
310歳で死んだってこと?イカつすぎるやろ。
かちかち山と舌切り雀はまた書きます多分。
浦島さんの亀はめちゃおもろいので序盤だけでも是非。