太宰夫婦をモチーフにしているであろう夫婦の話です。
妻視点で書かれているのは面白かった。
ヴィヨンの妻も妻目線やったけどちょっと違う感じ。
あらすじ
8年前に結婚して戦争が原因で夫は失業します。
戦争によってかなり苦労しましたが、妻は夫の優しさによって幸せだったと感じています。
それから夫はふらっと出て行って帰ってこなかったりフランス革命の話をして泣いちゃったりします。それでも私は夫に恋をしています。
妻は自分を『心中天網島』に出てくるおさんという人物に例えて
女房のふところには
鬼が棲 むか
あああ蛇 が棲むか
と悲嘆の気持ちを歌います。
『心中天網島』も最後主人公が愛人と心中するらしいよ。
夫は浮気してるくせに妻に優しくそのことがより妻を苦しめています。
自分のことを思ってくれているのに他の人を抱きしめている夫の姿が妻を地獄に突き落としています。
他に好きな人ができても自分の妻を忘れていないのは良心的だと男は思っているのかもしれないが、浮気するぐらいなら妻のことを完全に忘れてくれたほうがいい、というのがここでの妻の考えです。
何だかんだあって夫は以前勤めていた雑誌社の女性を妊娠させ、革命だと騒ぎ立てて心中します。
夫の手紙には「自分は恋のために死ぬのではなく、ジャーナリストとして、人に革命や破壊をそそのかしておきながら、いつも自分はそこから逃れていることへの自己嫌悪から、自ら革命家の十字架に登る決断をした。ジャーナリストの醜聞という現代の悪魔を反省させることに役立てば嬉しい」と妻からするとバカげたことが書かれていました。
妻は、気の持ち方を、軽くくるりと変えるのが真の革命で、それさえ出来たら、何のむずかしい問題もない。自分の妻に対する気ち1つ変える事も出来ないのに革命の十字架なんてと呆れます。
夫の死骸を引き取りに行く汽車の中で悲しみや怒りよりも呆れかえった馬鹿馬鹿しさに身悶えしました。
感想
もう浮気するか心中するかの話多すぎてわからん。
今回の妻は『ヴィヨンの妻』と違う印象受けるのでそういう書き分けできるのはすごいなーと思った。
心中前まで妻は夫のこと好き好きーって感じだったんですが心中を知ったときはあっさりしてました。
どうせ浮気するなら自分のこと忘れてほしいってことが実現したから呆れという感情になったんかなー。
夫婦と心中ネタがあまりにも多くて感想大体一緒になってしまう。
微妙に夫婦の立場違ったり心中の成功、失敗
『ヴィヨンの妻』と同年、太宰の亡くなる1年前の作品なので自分と重ねてる部分も多そうですね。
夫に絶望感がある書き方してる印象あるんですけど、個人的に妻と子供の方が絶望的じゃないかって思ってしまう。
普通にテンション下がるので明るい話読みたい。