幼少期から青年期までの様々な思い出が書かれています。
全体的に陰の者が書いた陰の思い出(個人の感想)です。
今回はそれぞれの章で個人的に面白かったエピソードを紹介して感想書いてみます。
まあまあ長いです。
一章
幼少期、小学校編です。
①
小学校低学年のときに綴方(作文の授業)でみんなに喝采されるためにいい子として振る舞ってた話。盗作までしてたらしい。
傑作として先生の中でも話題の「弟の影絵」という作品も少年雑誌の一等賞選作だったのをそっくりパクっています。
展覧会に出展することになりますが、本好きの生徒に盗作だとバレます。
私はその生徒の死ぬことを祈った。
どう考えても自分が悪いと思うしめちゃくちゃやん。文章の途中に急に人が死ぬこと祈り出したので焦りました。
綴方にはいい思い出ないそうです。パクったら駄目ですよ。
②
小学3,4年の頃から不眠症だったそう。
苦労性でいろんなことをほじくり返して気にするから尚のこと眠れなかったのだろうということ。
父の鼻眼鏡をこっそりいじくって硝子を割ってしまったときは幾夜も続けて寝苦しい思いをしました。
これも自分のせいですが、子供あるあるとして受け取っておこう。
この年齢で不眠症はかなり辛そう。 女中が寝かしつけてくれるけど全然寝れなくて、自分が寝るまで女中も寝られないから気を遣って寝るふりしてたり、しんどそうな性格してます。
これと関連してるのが以下の話。
或る秋の夜更けに祖母と夜番の爺がぼそぼそと語り合う話に耳を傾けていると、遠くから蟲おくり祭の太鼓の音がどんどんと響いてきて、ああ、まだ起きている人がたくさんあるのだ、と気強く思ったことだけは忘れずいるそう。
今だったら夜中の暴走族の音聞いてああ、こんな時間にも暴走してる元気な人たちがいるんだなあ、と気強く思うことがある人もいるかもしれないですね。
個人的には23時過ぎに聞こえてくるおばはんの大きすぎる話声が嫌いです。今回の話には全く関係ない感想。
蟲おくり祭についてはwiki見てください。
③
父親が亡くなった話。
近くの新聞社が父の訃報を号外で報じたそうです。遺族の名前に混じって自分の名前も新聞に載ってたらしい。
父の死よりもセンセイションの方に興奮を感じたって言うところがほおーって感じでした。
父の死骸は大きい寢棺に横たはり橇(そり)に乘つて故郷へ歸(かえ)つて來た。私は大勢のまちの人たちと一緒に隣村近くまで迎へに行つた。やがて森の蔭から幾臺(いくど)となく續(つづ)いた橇の幌(ほろ)が月光を受けつつ滑つて出て來たのを眺めて私は美しいと思つた。
ほおーってなるよね。
二章
中学校編です。
①
あんまり楽しくなかった中学生活の話。
学校の勉強もずっとおもんないなあって感じです。成績に未練があるので提出物は毎日ちゃんとやってます。
こんなんやる意味ないやろと思いながらちゃんとやっちゃうやつあるよね。本当は反発したいけどびびるからちゃんと出すんですよ。
秋になると近所の中学校との色々なスポーツにの試合が始まります。
野球については小説で満塁とかセンターとかの用語は知ってて、試合の見方についても次第にわかるようになりますが、あまり熱狂できません。
他校と試合がある度に応援団の一人として駆り出されていたそう。かわいそう。
応援団のせいでさらに中学生活が嫌なものになったそう。超かわいそう。
②
吹き出物の話。
思春期なので吹き出物もできます。
吹き出物を欲情の象徴と考えて眼の先が暗くなるほど恥ずかしかったらしいです。
そこまで思わなくてもってなったけど、家族からもボロクソ言われてたみたいなのでそれは嫌やなって思います。
一番上の姉から「治のところへは嫁に来る人があるまい」と言われたみたいです。
多分冗談で言ってると思うけどこの年代の人間に言わない方がいいよ、姉。
昔仲が悪かった弟は吹き出物を心配して薬を買ってきてくれたりします。
中学で故郷を離れたことで弟のいい点が見えてきてなんでも打ち明けて話せる仲になりました。
そんな弟にも「みよ」という女中を意識していることだけは打ち明けてませんでした。
続く。
三章
みよ編です。
①
夏休みの話。
4年生の夏休みに高等学校に受験勉強のために友人2人を連れて故郷に帰ります。ちなみに本当はみよを友人に見せたかったらしい。ヤバい。
昼ご飯を持ってくるのがどの女中であるのかを楽しみにする3人。
みよ以外の女中が来たときは卓をぱたぱた叩いたり舌打ちしたりして大騒ぎします。ヤバい。
みよが来たときはみんなしんとなり、みよが立ち去ると一斉に吹き出したりしてました。中学生過ぎる。
②
自意識過剰繊細神経質男の話。
①と同じ夏休み中のある日の食事ではみよが食事中の4人をうちわであおぎながら給仕をしていましたが、どうも自分よりも弟の方を多く仰いでいるような気がします。
みんなはみよが弟のこと好きなのを知ってるのに黙ってる、みんなして私をいじめていると思い込みます。
しかし2,3日経ったある朝、みよが自分の煙草を家族に見られないように取っておいてくれたので、気を良くします。
そこから勇気100倍になっはみよと関係を進めたいと考えなおすようになります。
アンパンマンよりだいぶ前に勇気100倍なってる唯一の人間。
大した用事でもないのにみよを呼びつけ、わざとくつろいだ格好をしてみてみよから声をかけられることを願ったが何もなかった。
自分から進んでみよを誘惑することもひかへた。私はみよから打ち明けられるのを待つことにした。私はいくらでもその機會をみよに與(あた)へることができたのだ。
女中相手なので上から感あるけどなんか全然なので悲しいです。
これからはもう、みよの決心しだいであると思つた。しかし、機會はなかなか來なかつたのである。番小屋で勉強してゐる間も、ときどきそこから脱け出て、みよを見に母屋へ歸つた。殆どあらつぽい程ばたんばたんとはき掃除してゐるみよの姿を、そつと眺めては唇をかんだ。
めっちゃ好きやん~~。
③
教師に殴られた話。
ある日教師に両頬殴られ事件が起こります。
任侠的な行為をしたにに殴られたことから友人達は怒り、授業をストライキしよう!と盛り上がります。
太宰は自分1人のためにストライキまでするのやめてくれと訴えると友人達に卑怯だ、勝手だとか言われてへこみまくります。
結局、教師は謝ってストライキは起こらず、友人達とも仲直りできました。しかし、この事件によって太宰の心は暗くなり、みよのことをしきりに思い出すようになります。
④
急に勝ちを確信する話。
母と姉が湯治から家に帰るついでに実家に帰ります。その夜、太宰は女性を思う心は凡俗ではないかという思いに悩まされます。
みよのことが起つてからは、私もたうとう莫迦になつて了つたのではないか。女を思ふなど、誰にでもできることである。しかし、私のはちがふ、ひとくちには言へぬがちがふ。私の場合は、あらゆる意味で下等でない。しかし、女を思ふほどの者は誰でもさう考へてゐるのではないか。しかし、と私は自身のたばこの煙にむせびながら強情を張つた。私の場合には思想がある!
!マーク出てくるのレアなので引用。
思想がある!と言っても他の人と考えてる内容一緒だと思います!
次の朝、みよを連れてブドウ狩りに出かけます。みよが手を虫に刺された時にアンモニアの瓶を渡してあげました。
その日の午後に津軽に戻りますが、みよは自分のことは忘れられなくなるだろう、もう自分の物だと思って安心します。
思い悩んでから勝確までが早すぎて何回か読み直したけど納得いかなかった。
⑤
最後の冬休みの話。
中学最後の長期休暇で故郷に戻りますが、みよの姿がありません。
次兄によれば、祖母と喧嘩をして故郷に帰ったという話だったが、鶏舎の番人によると、みよはある下男に暴行を受け、そのことを他の女中に知られてしまい太宰の家にいられなくなったらしい。
下男は他にも悪いことをしていたので太宰が戻ってくるよりも前に追い出されています。
冬休みが終わりに近づいたころ、太宰と弟は文庫蔵に入って、様々な蔵物や掛け軸、写真を見て遊んでいました。その遊びおもろいんか。
弟が箱に入っていた大量の写真から、叔母と母、付き添いをしたみよの3人が写った写真を見つけます。
その頃には太宰の心の中からみよに関する弟と和解していたので、割と冷静に写真を見ることができました。
太宰は叔母とみよがなんとなく似ていると感じたそうです。
叔母に育てられてた時期もあるので無意識でみよのことが気になってたかもねってことらしい。
最後の最後にみよが好きなことに理由付けしてきたよ。
まとめ
こんな感じで基本的にはみよの話がメインになってます。
多分太宰の人生から見たら陽の時期かなって思います。個人的には時折陰キャを感じました。
弟との距離感は結構面白い。
弟はみよのこと気になってたのかとか弟目線の太宰が気になるー。
彼は自分の顔いいと思ってるタイプの人です。現代の俳優が自分を演じてるの見て、まあこいつの顔ならセーフかな~とか考えてることでしょう。
子供時代の太宰知りたい方は読んでみてください。
誤字脱字誤情報あれば教えてください。