太宰・ブログ・治

太宰治の作品を基本的に五十音順に読んで感想書いたり、そんなこととは全然関係ない感想書いたりします。

『水を縫う』

非常に読んでよかった!!

 

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松岡清澄、高校一年生。 一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。 いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。 そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。

 

家族小説というジャンルがあるのかはよく分かってないけどよく国語のテストに出るタイプの作品っぽい。重松清とかも同じ系統かな?

テストで一部分だけ読みまくったタイプの内容!ってなりました。

一つの家族がそれぞれの章ごとでメインキャラ変わりつつ描かれてます。一応主人公は裁縫が趣味の清澄だと思う。男の子なのに裁縫なんてという周りからの目線を気にしてはいるものの、本当に好きなことなのでちゃんと続けてるのがいいなあと思った。

母親は周りから浮いてほしくないから裁縫やってるのをよく思ってない。これを読んでる自分は清澄目線で読んでいたので何でそんなこと言うんだ!と思ったけど実際親目線だったら仕方ないんだろうなあとも思う。結局立場一緒でも他人だから気持ち分からないだろうともなる。

 

個人的にはおばあちゃんの話が本当によかった。今以上に男らしいとか女らしいとかの抑圧が強いのでやっぱり大変だったんだろうなと思う。"女の子なのに◯◯"という言い回しでの抑圧だけでなく"女の子は賢くてかわいい"という一見褒め言葉に見える内容でも、かわいいから守られるべき存在だ、みたいな偏見入ってると受け取れるのは意外と考えたことがなかった。

かわいいって顔が綺麗というニュアンスが1番強い意味だと思ってたけどそういうことじゃないかも。

ずっと自分の意思を抑えられてたおばあちゃんが夜あそびしたり、プール行って楽しそうに過ごせるようになったのが本当によかった。この作品内で1番泣きそうになった。電車乗ってたから泣いてないだけでめちゃくちゃ刺さった。

孫はもちろん子どももいないのにこの章が1番刺さるんかいと思いました。

 

あとは父親の章と見せかけて父親の雇い主の黒田さんの章も好きだったなあ。この人は子ども持つ意味があまりないと考えてて結婚もしてないので考え方的には自分に1番近いと思う。

毎月お金を渡すために清澄と会ってて、父親のために撮ってる写真を見返してるときに他人の子どもなのに父性のようなものが出てくるって部分がちょっと寂しく感じたけど、最後は清澄からも父親が2人いるようなって言われてたのでうまく収まったのかな。

 

どの登場人物も自分から見たら所謂"普通"な人たちだと思ったけど、本人たちはその普通が何かで悩んでいて案外みんなそんなものなのかなと。自分の中で考えている普通に抑圧されているような気がした。

普通って言葉が罪深い〜。